【SDGs169のターゲット】1-2. あらゆる次元の貧困状態を半減

SDGsでは、17のゴールの各々に紐づけられる169のターゲットを定めています。今回は、「1. 貧困をなくそう」の7つのターゲットのうち、「1-2. 2030年までに、各国定義によるあらゆる次元の貧困状態にある、全ての年齢の男性、女性、子供の割合を半減させる」について見ていきましょう。

あらゆる次元の貧困の半減=相対的貧困の半減

貧困は絶対的貧困相対的貧困に分類されます。絶対的貧困とは生活費が国際的に定められた一定の基準値以下の暮らしを指し、相対的貧困とはその国の中で比較した際に貧困に分類される暮らしのことです。SDGsでは「あらゆる次元の貧困」という形で、相対的貧困の半減も目指しています。相対的貧困は新興国か、先進国かを問わず存在するため、どの国にも無縁ではありません。

日本の相対的貧困にあたる所得層

まず、日本の一般的な世帯を見てみましょう。厚生労働省の「国民生活基礎調査」によると、2018年度における日本の世帯における年間の平均所得金額は552.3万円、中央値は437万円です。平均所得金額以下の世帯が61.1%を占めています。ただし、所得金額が低くても退職金などの貯蓄がある高齢者世帯が含まれているため、平均的な暮らしぶりを単純に表しているわけではない点に注意が必要です。なお、高齢者のうち8割に貯蓄があり、うち1,000万円以上貯蓄のある人は33.8%です。年間の一人当たりの手取り(税金や社会保険料を差し引いた金額)の中央値は、世帯の手取りを世帯人数の平方根で割って算出すると、253万円になります。毎月約20万円前後を自由に使える生活(高齢者が貯蓄を切り崩す場合はそれ以上)が、統計上の日本国内の一般的な暮らしといえます。

次に、相対的貧困の基準や相対的貧困に当てはまる人の割合を見てみましょう。一般的な暮らしの人の半分以下しか使えるお金のない人が、相対的貧困に当てはまります。厚生労働省の同調査では、OECDの基準に基づき世帯の手取りを世帯人数の平方根で割った金額の中央値の半分を貧困線として定めています。日本における2018年度の貧困線は127万円で、全体の15.4%もの人が当てはまります。怪我や病気などの事情により働くことができない人の最低限度の生活を保障する「生活保護」により受給できる金額は、地域や年齢などにより異なりますが約10万円~約15万円ほどなので、貧困線未満の暮らしは生活保護の人の暮らしと同程度といえます。実際には、生活保護を受給している人は2020年8月時点で約205万人しかいないため、相当数の人が「働いているものの貧しい」という状況に置かれていると考えられます。なかでも、世帯主が18歳以上65歳未満で子供がいる世帯の貧困率は2018年時点で12.6%であり、うち約半数の48.1%がひとり親です。

世界中で問題視される「子どもの貧困」

貧困問題のなかでも「子どもの貧困」はとくに根深い問題です。貧困に端を発した虐待により生命が危機的状況に置かれるだけでなく、何とか生きることができたとしても体や心に傷を負ってしまうケース、十分な教育を受けることができず貧困を脱することができないケースが世界的に多いためです。また、外部から状況を把握することの困難性や、支援が親に使い込まれてしまう、養育費が支払われないなどの問題もあります。こうした子どもの貧困は、日本も例外ではありません。

貧困問題は当事者でさえも本人の自己責任の問題だと考えているケースがありますが、根底には労働環境や教育システム、子育て環境などの社会問題があり、今後世界的に解決に向けて取り組んでいくべき大きな社会課題なのです。