【SDGs17のゴール】3. すべての人に健康と福祉を

SDGs(持続可能な開発目標)17のゴール(目標)。その項目の3つ目に掲げられているのが「すべての人に健康と福祉を」です。SDGsでは、2030年までにあらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進することを目指しています。直近、2020年に入ってから、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックが、世界中で猛威を振るっており、この目標に対する関心も必然的に高まっているといえるでしょう。

SDGsが目指す2030年までに「すべての人に健康と福祉を」~現状認識~

まず、SDGs「3. すべての人に健康と福祉を」がカバーする領域は、非常に広範囲にわたるものです。そこで、ここでは(1)妊産婦死亡率について、(2)5歳未満児の死亡率について、(3)エイズ、結核、マラリアその他の感染症についての3点に絞って話を進めていきます。

(1)妊産婦死亡率について

SDGsの前身であるミレニアム開発目標(MDGs)において、その達成状況に最も進捗の遅れが生じてしまったのが、この妊産婦死亡率です。アフリカ、とくにサブサハラ・アフリカ地域(サハラ砂漠以南の地域)の状況が悪く、世界銀行が公表するデータによると、2017年時点で10万人の出生数あたり500人超の妊産婦が亡くなっています。

(2)5歳未満児の死亡率について

近年、5歳未満児の死亡率は減少傾向にあります。しかしながら、世界銀行が公表するデータによると、2018年時点で地域別の5歳未満児の死亡者数を見ると、5割超がサブサハラ・アフリカ地域、次いで約3割が南アジア地域と、地域によって大きな偏りがあります。これらの地域に共通する特徴として、出生率が高く、1世帯あたりの子どもの数が相対的に多い一方、世帯収入が低く、貧困のために栄養や医療が著しく不足しがちな点が挙げられます。

(3)エイズ、結核、マラリアその他の感染症について

2000~2015年のMDGsの期間において、最も改善が見られたものの一つが感染症の感染者数です。しかしながら、こちらも地域間格差が大きく、一例として2020年のWHOの報告によると、世界のマラリア感染者総数のうちの9割超がアフリカ地域に集中しています。また、冒頭でも取り上げましたが、今年、2020年に入ってから、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックが発生しており、世界的に大きな関心事として見逃すわけにはいきません。

SDGs「3. すべての人に健康と福祉を」に紐づけられる13個のターゲット

SDGsでは、17のゴールの各々に紐づけられる169のターゲットを定めています。「3. 全ての人に健康と福祉を」のターゲットは以下の13個になります。

3-12030年までに、世界の妊産婦の死亡率を出生10万人当たり70人未満に削減する。
3-2全ての国が新生児死亡率を少なくとも出生1,000件中12件以下まで減らし、5歳以下死亡率を少なくとも出生1,000件中25件以下まで減らすことを目指し、 2030年までに、新生児及び5歳未満児の予防可能な死亡を根絶する。
3-32030年までに、エイズ、結核、マラリア及び顧みられない熱帯病といった伝染病を根絶するとともに肝炎、水系感染症及びその他の感染症に対処する。
3-42030年までに、非感染性疾患による若年死亡率を、予防や治療を通じて3分の1減少させ、精神保健及び福祉を促進する。
3-5薬物乱用やアルコールの有害な摂取を含む、物質乱用の防止・治療を強化する。
3-62020年までに、世界の道路交通事故による死傷者を半減させる。
3-72030年までに、家族計画、情報・教育及び性と生殖に関する健康の国家戦略・計画への組み入れを含む、性と生殖に関する保健サービスを全ての人々が利用できるようにする。
3-8全ての人々に対する財政リスクからの保護、質の高い基礎的な保健サービスへのアクセス及び安全で効果的かつ質が高く安価な必須医薬品とワクチンへのアクセスを含む、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を達成する。
3-92030年までに、有害化学物質、並びに大気、水質及び土壌の汚染による死亡及び疾病の件数を大幅に減少させる。
3-a全ての国々において、たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約の実施を適宜強化する。
3-b主に開発途上国に影響を及ぼす感染性及び非感染性疾患のワクチン及び医薬品の研究開発を支援する。また、知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)及び公衆の健康に関するドーハ宣言に従い、安価な必須医薬品及びワクチンへのアクセスを提供する。同宣言は公衆衛生保護及び、特に全ての人々への医薬品のアクセス提供にかかわる「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)」の柔軟性に関する規定を最大限に行使する開発途上国の権利を確約したものである。
3-c開発途上国、特に後発開発途上国及び小島嶼開発途上国において保健財政及び保健人材の採用、能力開発・訓練及び定着を大幅に拡大させる。
3-d全ての国々、特に開発途上国の国家・世界規模な健康危険因子の早期警告、危険因子緩和及び危険因子管理のための能力を強化する。
出所:外務省HP資料に基づいてクラウドクレジット作成

前述したアフリカ地域をはじめとした妊産婦死亡率や5歳未満児の死亡率が高く、感染症の感染者数が多い地域では、薬品や医療従事者の不足、高額な医療サービス、医療機関へのアクセスの難しさ等々、課題が山積しています。これらに対し、一つ一つ丁寧に課題解決に向けた取組みを行っていくことが必要不可欠です。医療の現場は、医療従事者以外の方々にとって、別世界のように感じられがちかもしれません。しかしながら、まずは一人ひとり、解決に向けた問題意識を持つことが肝要といえるでしょう。