【SDGs17のゴール】15. 陸の豊かさも守ろう

SDGs(持続可能な開発目標)17のゴール(目標)。その項目の15個目に掲げられているのが「陸の豊かさも守ろう」です。SDGsでは、2030年までに陸に生息する生態系の保護や回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処、ならびに土地の劣化の阻止や回復、生物の多様性の損失を阻止することを目指しています。
1992年に開催された「地球サミット」以降、森林保護や生態系保護は人類共通の目標になっています。しかし、約30年経った現在でも短期的な経済的利益を優先した森林伐採や密猟等の根絶には至っていません。
森林は、洪水などの災害を防ぐダムの役割や、水を浄化する役割、二酸化炭素を吸収する役割などを担っています。また、数多くの動物、植物、昆虫たちが生息する場所でもあります。森林が減少すると、酸性雨や土砂災害、大気汚染、砂漠化、地球温暖化などが起ります。森林の減少により生態系のバランスが崩れると、疫病の蔓延や食料不足など、私たちの生活に直結する深刻な被害が発生します。
SDGs「15. 陸の豊かさも守ろう」が掲げる森林保護や生態系保護の重要性
世界の森林面積は、農地転用や森林火災により減少しています。1990年は約41億ヘクタールありましたが、現在は約40億ヘクタールとなっています。1億ヘクタールは日本の総面積2,646個分ですから、非常に多くの森林が減少していると言えます。中でもインドネシアやブラジルの熱帯林の減少が著しく、2005年以降平均で毎年九州1つ分の森林面積が減少しています。
熱帯林減少の責任は、先進国か新興国かを問わず、世界全体にあります。森林減少の直接的な原因は、牧畜やパーム、大豆、木材などの栽培ですが、これらの農産物は先進国に輸出され、スナック菓子やカップラーメン、石鹸など私たちが日常的に使用する物の材料になります。
森林破壊により特定の生き物が減少すると、その生き物に食べられていた生き物が増殖します。これまでは無害だった生き物も、増殖しすぎることで餌や住処を求めて人里まで出没するようになり、食害や病原菌をもたらします。逆に、特定の生き物が減少すると、その生き物を食べていた生き物も減少し、どんどんバランスが崩れていきます。その結果、森林から遠い都市で生活していたとしても、疫病や食糧難に見舞われることになります。
地球温暖化問題や森林破壊の問題は影響が出るまでに時間がかかるため、私たちの生活に問題が生じてから対策しようとしても、手遅れになります。一度崩れたバランスを元通りにすることは極めて難しいため、森林を保護し最低限今のバランスを保つことが重要です。
SDGs「15. 陸の豊かさも守ろう」に紐づけられる12個のターゲット
SDGsでは、17のゴールの各々に紐づけられる169のターゲットを定めています。「15. 陸の豊かさも守ろう」のターゲットは以下の12個になります。
15-1 | 2020年までに、国際協定の下での義務に則って、森林、湿地、山地及び乾燥地をはじめとする陸域生態系と内陸淡水生態系及びそれらのサービスの保全、回復及び持続可能な利用を確保する。 |
15-2 | 2020年までに、あらゆる種類の森林の持続可能な経営の実施を促進し、森林減少を阻止し、劣化した森林を回復し、世界全体で新規植林及び再植林を大幅に増加させる。 |
15-3 | 2030年までに、砂漠化に対処し、砂漠化、干ばつ及び洪水の影響を受けた土地などの劣化した土地と土壌を回復し、土地劣化に荷担しない世界の達成に尽力する。 |
15-4 | 2030年までに持続可能な開発に不可欠な便益をもたらす山地生態系の能力を強化するため、生物多様性を含む山地生態系の保全を確実に行う。 |
15-5 | 自然生息地の劣化を抑制し、生物多様性の損失を阻止し、2020年までに絶滅危惧種を保護し、また絶滅防止するための緊急かつ意味のある対策を講じる。 |
15-6 | 国際合意に基づき、遺伝資源の利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分を推進するとともに、遺伝資源への適切なアクセスを推進する。 |
15-7 | 保護の対象となっている動植物種の密猟及び違法取引を撲滅するための緊急対策を講じるとともに、違法な野生生物製品の需要と供給の両面に対処する。 |
15-8 | 2020年までに、外来種の侵入を防止するとともに、これらの種による陸域・海洋生態系への影響を大幅に減少させるための対策を導入し、さらに優先種の駆除または根絶を行う。 |
15-9 | 2020年までに、生態系と生物多様性の価値を、国や地方の計画策定、開発プロセス及び貧困削減のための戦略及び会計に組み込む。 |
15-a | 生物多様性と生態系の保全と持続的な利用のために、あらゆる資金源からの資金の動員及び大幅な増額を行う。 |
15-b | 保全や再植林を含む持続可能な森林経営を推進するため、あらゆるレベルのあらゆる供給源から、持続可能な森林経営のための資金の調達と開発途上国への十分なインセンティブ付与のための相当量の資源を動員する。 |
15-c | 持続的な生計機会を追求するために地域コミュニティの能力向上を図る等、保護種の密猟及び違法な取引に対処するための努力に対する世界的な支援を強化する。 |
現在、作物の品種改良は作物同士の遺伝子を実験的に掛け合わせることでも実施されます。また、薬や化粧品に使用される有用物質は、研究が進むことでしばしば植物などから発見されます。今はどう役に立つかわからなくても、私たちを取り巻く環境の変化や研究の進捗により将来的に利用価値が判明する可能性があります。このように、遺伝情報は潜在的に価値があることから「遺伝資源」と呼ばれます。森林保護は、地球温暖化問題や生態系のバランス維持、自然災害防止の文脈だけでなく、遺伝資源の保護と活用という文脈においても重要となります。