【SDGs17のゴール】14. 海の豊かさを守ろう

SDGs(持続可能な開発目標)17のゴール(目標)。その項目の14個目に掲げられているのが「海の豊かさを守ろう」です。SDGsでは、2030年までに持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能なかたちで利用することを目指しています。生物は海から生まれました。我々の祖先は海から陸に上がったと言われています。現在でも、海は様々な恩恵をもたらす命の源です。この海を守っていくことは人類の大きな使命ですが、それが現在危機にさらされています。

SDGs「14. 海の豊かさを守ろう」に向けた現状認識~危機にさらされる海と海洋資源~

私たちが消費するペットボトルやビニール袋は海に捨てられ、それが波などによって細かく(5ミリメートル以下)破壊されて、世界中の海を漂っています。これによって様々な弊害が発生します。これは「マイクロプラスチック問題」と呼ばれています。

マイクロプラスチック、小さくなったプラスチックを海洋生物が食べてしまい、彼らに悪影響を及ぼしています。たとえば、海鳥の消化管がプラスチックで詰まってしまったり、消化管が傷つけられたり。また、胃にプラスチックごみが大量に詰まったクジラの死体が打ち上げられる例が相次ぐなど、問題は深刻化しています。

問題はそれだけに止まりません。マイクロプラスチックに含まれる有害な化学物質が魚介類に蓄積し、それを食べた我々の人体にも悪影響を及ぼすことが懸念されています。

海に危機を及ぼしている問題はマイクロプラスチック問題だけではありません。「海洋酸性化」も大きな問題の一つです。二酸化炭素排出量が世界中で増える中、海水の酸性度が高まっています。多くの海洋生物は海水の酸性度が一定以上になると生息が難しくなってしまいます。

また、乱獲によって海洋資源が枯渇していくのも大きな問題です。国際連合食糧農業機関(FAO)によると、持続不可能なレベルにまで乱獲された海域別魚種資源の割合は1974年が10%、1989年は26%、2008年には30%以上、2015年には33%と急激に増加しています。このまま乱獲が続けば多くの魚が絶滅の危機に瀕することになります。

SDGs「14. 海の豊かさを守ろう」に紐づけられる10個のターゲット

SDGsでは、17のゴールの各々に紐づけられる169のターゲットを定めています。「14. 海の豊かさを守ろう」のターゲットは以下の10個になります。

14-12025年までに、海洋堆積物や富栄養化を含む、特に陸上活動による汚染など、あらゆる種類の海洋汚染を防止し、大幅に削減する。
14-22020年までに、海洋及び沿岸の生態系に関する重大な悪影響を回避するため、強靱性(レジリエンス)の強化などによる持続的な管理と保護を行い、健全で生産的な海洋を実現するため、海洋及び沿岸の生態系の回復のための取組を行う。
14-3あらゆるレベルでの科学的協力の促進などを通じて、海洋酸性化の影響を最小限化し、対処する。
14-4水産資源を、実現可能な最短期間で少なくとも各資源の生物学的特性によって定められる最大持続生産量のレベルまで回復させるため、2020年までに、漁獲を効果的に規制し、過剰漁業や違法・無報告・無規制(IUU)漁業及び破壊的な漁業慣行を終了し、科学的な管理計画を実施する。
14-52020年までに、国内法及び国際法に則り、最大限入手可能な科学情報に基づいて、少なくとも沿岸域及び海域の10パーセントを保全する。
14-6開発途上国及び後発開発途上国に対する適切かつ効果的な、特別かつ異なる待遇が、世界貿易機関(WTO)漁業補助金交渉の不可分の要素であるべきことを認識した上で、2020年までに、過剰漁獲能力や過剰漁獲につながる漁業補助金を禁止し、違法・無報告・無規制(IUU)漁業につながる補助金を撤廃し、同様の新たな補助金の導入を抑制する。
14-72030年までに、漁業、水産養殖及び観光の持続可能な管理などを通じ、小島嶼開発途上国及び後発開発途上国の海洋資源の持続的な利用による経済的便益を増大させる。
14-a海洋の健全性の改善と、開発途上国、特に小島嶼開発途上国および後発開発途上国の開発における海洋生物多様性の寄与向上のために、海洋技術の移転に関するユネスコ政府間海洋学委員会の基準・ガイドラインを勘案しつつ、科学的知識の増進、研究能力の向上、及び海洋技術の移転を行う。
14-b小規模・沿岸零細漁業者に対し、海洋資源及び市場へのアクセスを提供する。
14-c「我々の求める未来」のパラ158において想起されるとおり、海洋及び海洋資源の保全及び持続可能な利用のための法的枠組みを規定する海洋法に関する国際連合条約(UNCLOS)に反映されている国際法を実施することにより、海洋及び海洋資源の保全及び持続可能な利用を強化する。
出所:外務省HP資料に基づいてクラウドクレジット作成

海洋汚染防止や海洋資源保全の問題は、温暖化問題と構造が似ています。ある国の海が汚染された場合に、その被害に遭うのはその国だけではありません。「私たちの海だから、汚そうが乱獲しようが勝手でしょ」という理屈は通じません。ある国の行為がグローバルな影響を及ぼします。一つの国が努力をして海洋汚染を食い止めようとしても、各国の協力がなければ意味がないのです。

その観点からも、世界193の国と地域が上記のような目標設定に合意したことは大きな意味を持ちます。世界中で多様な考え方がある中、少なくともこの問題に関しては各国が協力して取り組まなければならない、という合意が形成されたのです。今後、この目標がきちんと実行されるかどうかを各国が協力してモニタリングしていく必要があります。