【SDGs17のゴール】11. 住み続けられるまちづくりを

SDGs(持続可能な開発目標)17のゴール(目標)。その項目の11個目に掲げられているのが「住み続けられるまちづくりを」です。SDGsでは、2030年までに包摂的で安全かつ強靭(レジリエント)で持続可能な都市および人間居住を実現することを目指しています。人の生活の基本となる衣食住の「住」に関わる重要な目標です。

SDGs「11. 住み続けられるまちづくりを」実現するために~新興国の「まち」~

このような目標が設定されている裏には、「住み続けられないまち」がたくさんあり、放置しておくと危機的状況になる可能性がある、ということを示しています。どのような理由で「住み続けられないまち」が生まれるのでしょうか。ここからは、筆者が滞在したことのある新興国、ニカラグアやフィリピン、ペルーやメキシコでの体験談をご紹介いたします。

ニカラグアは、道路が整備されておらず、穴があちこちに空いていたりするため、日本国内なら車で1時間走れば着くところに、3時間かかったりすることがあります。これでは人の移動が制限されてしまい、円滑な経済活動が行えません。また、下水道が整備されておらず、少し激しい雨が降るとすぐ道が冠水してしまいます。冠水した道路では渋滞が起き、移動が著しく制限されます。

フィリピンでは、首都マニラに古い型の車がたくさん走っており、大気汚染が深刻な状況です。黒煙を巻き上げながら走る車を頻繁に見かけます。また、フィリピンは頻繁に台風等の影響で水害に見舞われますが、水害に脆弱なインフラしか整っていないため、日本では死者が出ないような規模の災害でも多くの人が亡くなってしまっています。

ペルーやメキシコにおいても、都市部に職を求めて人が流入し、人口過剰な状態になっています。渋滞が頻繁に起こり、約束の時間に打ち合わせ場所に行けないことが何度もありました。

これらの新興国のまちでは、格差の問題が深刻で、スラム街が数多く存在します。スラム街は治安が悪く、犯罪の温床になりやすい環境です。

SDGs「11. 住み続けられるまちづくりを」に紐づけられる10個のターゲット

SDGsでは、17のゴールの各々に紐づけられる169のターゲットを定めています。「11.住み続けられるまちづくりを」のターゲットは以下の10個になります。

11-12030年までに、すべての人々の、適切、安全かつ安価な住宅及び基本的サービスへのアクセスを確保し、スラムを改善する。
11-22030年までに、脆弱な立場にある人々、女性、子ども、障害者及び高齢者のニーズに特に配慮し、公共交通機関の拡大などを通じた交通の安全性改善により、すべての人々に、安全かつ安価で容易に利用できる、持続可能な輸送システムへのアクセスを提供する。
11-32030年までに、包摂的かつ持続可能な都市化を促進し、すべての国々の参加型、包摂的かつ持続可能な人間居住計画・管理の能力を強化する。
11-4世界の文化遺産及び自然遺産の保護・保全の努力を強化する。
11-52030年までに、貧困層及び脆弱な立場にある人々の保護に焦点をあてながら、水関連災害などの災害による死者や被災者数を大幅に削減し、世界の国内総生産比で直接的経済損失を大幅に減らす。
11-62030年までに、大気の質及び一般並びにその他の廃棄物の管理に特別な注意を払うことによるものを含め、都市の一人当たりの環境上の悪影響を軽減する。
11-72030年までに、女性、子ども、高齢者及び障害者を含め、人々に安全で包摂的かつ利用が容易な緑地や公共スペースへの普遍的アクセスを提供する。
11-a各国・地域規模の開発計画の強化を通じて、経済、社会、環境面における都市部、都市周辺部及び農村部間の良好なつながりを支援する。
11-b2020年までに、包含、資源効率、気候変動の緩和と適応、災害に対する強靱さ(レジリエンス)を目指す総合的政策及び計画を導入・実施した都市及び人間居住地の件数を大幅に増加させ、仙台防災枠組2015-2030に沿って、あらゆるレベルでの総合的な災害リスク管理の策定と実施を行う。
11-c財政的及び技術的な支援などを通じて、後発開発途上国における現地の資材を用いた、持続可能かつ強靱(レジリエント)な建造物の整備を支援する。
出所:外務省HP資料に基づいてクラウドクレジット作成

国連によると、現在世界人口の55%が都市部に住んでいますが、2050年には68%が都市部に住むようになると予測されています。世界の人口増加を加味すると、2050年までに25億人が新たに都市部に流入されると予測されており、そのうち90%がアジアとアフリカにおいて起こる、とのことです。「住み続けられるまちづくり」は、まさに待ったなしの課題です。

日本をはじめとした先進国は、まちづくりの技術やノウハウ、資金をODA(政府開発援助)や民間の投資といったかたちで新興国へ提供することで、目標達成に向けた貢献をしていくことが必要不可欠といえます。