【SDGs17のゴール】1. 貧困をなくそう

SDGs(持続可能な開発目標)17のゴール(目標)。その項目の1つ目に掲げられているのが「貧困をなくそう」です。「貧困」はこれまでにも様々な機関が解決に向けて動いていますが、現状においても解決に至っていない世界的に難しい課題になります。しかし、SDGsでは、2030年までに極度の貧困をなくすとともに、相対的貧困をも半減することを目指しています。

SDGsにおける「貧困」の定義~極度の貧困とMDGsで課題として残った相対的貧困~

「貧困」という言葉を聞いて、どのような状態を思い浮かべるでしょうか。世界銀行は貧困人口を測るための一つの指標として、国際貧困ラインを定めています。この指標によると、1日に1.90米ドル(約203円、1米ドル=107円換算)未満で生活する方たちを「極度の貧困層」としており、世界全体の貧困層の数を計測可能なものとしています。

SDGsの前身であるミレニアム開発目標(MDGs)以降、SDGsでは1日に1.25米ドル(約134円、1米ドル=107円換算)未満で生活する方々を極度の貧困層としています。国際社会はMDGsの達成期限である2015年までにも、極度の貧困層の総人口に占める割合を大幅に低下させてきました。

これは、MDGsが策定された2000年当時、多くの貧困層を抱えていた中国やインド、ブラジルなどの新興国の一部が、その後に急速な経済成長を遂げたことにより、世界全体の貧困人口の削減に大きく貢献したためと考えられています。経済成長を通じて貧困を削減するアプローチは功を奏したといえます。

ただ、MDGsでは、そもそも国を単位とした総人口に占める極度の貧困層の割合を低下させることへの課題意識に偏りすぎた感があります。日本の外務省の発行する『2015年版 国際協力白書』の中では、MDGsで積み残された課題として、経済成長を遂げた新興国における国内の経済格差の増大が取り上げられています。つまり、国内における男女や収入、地域の違いによる経済格差の存在が浮き彫りになったのです。

この国内における経済格差の増大は近年、新興国に止まらず、日米欧といった先進国においても注目度が高まっています。最近は各メディア媒体を通じて、その国の一般的な生活水準等と比べ経済的に困窮した状態を指す、「相対的貧困」という言葉を目にする機会が多くなったかと思います。こうした相対的貧困の方々は、先ほどの極度の貧困層と比して顕在化しにくいという難点を抱えています。しかし、生活に支障があり、将来に対する不安が大きく、物心ともに安定しないという深刻性を無視することはできません。冒頭でお伝えしたように、SDGsではこの相対的貧困についても、2030年の目標達成期限までに半減することを目指しているというわけです。

SDGs「1. 貧困をなくそう」に紐づけられる7つのターゲット

SDGsでは、17のゴールの各々に紐づけられる169のターゲットを定めています。「1. 貧困をなくそう」のターゲットは以下の7つになります。

1-12030年までに、現在1日1.25ドル未満で生活する人々と定義されている極度の貧困をあらゆる場所で終わらせる。
1-22030年までに、各国定義によるあらゆる次元の貧困状態にある、全ての年齢の男性、女性、子供の割合を半減させる。
1-3各国において最低限の基準を含む適切な社会保護制度及び対策を実施し、2030年までに貧困層及び脆弱層に対し十分な保護を達成する。
1-42030年までに、貧困層及び脆弱層をはじめ、全ての男性及び女性が、基礎的サービスへのアクセス、土地及びその他の形態の財産に対する所有権と管理権限、相続財産、天然資源、適切な新技術、マイクロファイナンスを含む金融サービスに加え、経済的資源についても平等な権利を持つことができるように確保する。
1-52030年までに、貧困層や脆弱な状況にある人々の強靱性(レジリエンス)を構築し、気候変動に関連する極端な気象現象やその他の経済、社会、環境的ショックや災害に暴露や脆弱性を軽減する。
1-aあらゆる次元での貧困を終わらせるための計画や政策を実施するべく、後発開発途上国をはじめとする開発途上国に対して適切かつ予測可能な手段を講じるため、開発協力の強化などを通じて、さまざまな供給源からの相当量の資源の動員を確保する。
1-b貧困撲滅のための行動への投資拡大を支援するため、国、地域及び国際レベルで、貧困層やジェンダーに配慮した開発戦略に基づいた適正な政策的枠組みを構築する。
出所:外務省HP資料に基づいてクラウドクレジット作成

このように、先進国か、新興国かを問わず、SDGs達成期限である2030年までに、「1. 貧困をなくそう」を実現するためには、幅広いアプローチが必要不可欠です。また、貧困削減はSDGsの他のゴールそれぞれと密接なつながりを有しています。すべてのSDGs達成に向けて、貧困問題への関心の高まりと実際の取組みは、最も重要なことの一つといっても言い過ぎではないでしょう。