【SDGs169のターゲット】9-1.強靭(レジリエント)なインフラの開発

SDGsでは、17のゴールの各々に紐づけられる169のターゲットを定めています。今回は、「9. 産業と技術革新の基盤をつくろう」の8つのターゲットのうち、「9-1. すべての人々に安価で公平なアクセスに重点を置いた経済発展と人間の福祉を支援するために、地域・越境インフラを含む質の高い、信頼でき、持続可能かつ強靱(レジリエント)なインフラを開発する」について見ていきましょう。

すべての人々に安価で公平なアクセスとは?

日本では戦後、とくに都市部を中心に、人々の移動の主な手段を公共交通とする、いわゆる「公共交通指向型」の都市開発が推進されてきました。しかし、このような基盤がある都市などは世界的に稀であり、交通インフラの整備に課題がある新興国はまだ数多く存在しています。こういった新興国の都市においては、物理的な道路の不足に加え、交通渋滞が大きな社会問題となっています。

また、交通インフラの整備に課題のある新興国においては、経済格差が人々の移動手段へのアクセスへの格差を生み出し、その結果、生活の質にも大きな違いを生み出す状況になっています。効率的な移動手段(自動車やバイクなど)を購入できる人とそうでない人で、就学や就職などの機会に大きな開きが生まれてしまっているのです。

SDGsでは、こうした格差を解消するため、交通インフラを整備することを目指しています。

地域・越境インフラとは

インフラとは、インフラストラクチャーの略で、福祉や経済成長を支える社会基盤のことです。道路や鉄道路線、バス路線などの交通インフラのほか、上下水道やごみ処理施設、病院や学校、裁判所、金融の仕組みなども広義のインフラに含まれます。

インフラのうち、津波や地震などの自然災害を低減する天然の地形や森などを「自然インフラ」といいます。これに対し、公園の盛土や保安林、過去の災害を現在に伝える史跡など、地域に溶け込みながら被害を低減する人工的なものを「地域インフラ」といいます。

また、国と国を繋ぐ橋や道路、国境施設の運営などを「越境インフラ」といいます。越境インフラを整備することによって、人の移動や輸出入が活発化し経済発展に寄与すると考えられています。

地域インフラを整備することでより災害に強く強靱(レジリエント)な社会を、越境インフラを整備することで経済発展を実現できます。SDGsは、交通アクセスの格差解消に加えて、経済対策と災害対策を同時に進めることを目指しているといえます。

持続可能かつ強靱(レジリエント)とは?

自然災害の被害は、「ハザード(Hazard)」「脆弱性(Vulnerability)」「曝露(Exposure)」の3つの観点から議論されます。「ハザード(Hazard)」とは自然災害そのもの威力、「脆弱性(Vulnerability)」とは災害にどの程度弱いか(裏を返せばどの程度事前に備えることができているか)、「曝露(Exposure)」とは被害の範囲のことです。

気候変動で台風の規模拡大や高潮の頻繁な発生などが見られ、ハザードが強化されてしまっているなか、とくに新興国の「脆弱性改善=日頃の備え」は先進国と雲泥の差があります。それどころか、新興国は人口増や急速な都市化により、脆弱性はそのままで「曝露=被害を受けると予測される人数」は増加しています。この背景は、内閣府の「平成27年版防災白書」にも記載されています。

このような事態を根本的に解決するためには、脆弱性を低減させる「強靱性(レジリエンス)」が必要となります。「強靱性(レジリエンス)」とは、被害最小化や被災からの迅速な回復力のことです。そこで国連は、SDGsで、随所にこの「強靱性(レジリエンス)」を盛り込んでいます。