【SDGs169のターゲット】8-2. 高いレベルの経済生産性の達成

SDGsでは、17のゴールの各々に紐づけられる169のターゲットを定めています。今回は、「8. 働きがいも経済成長も」に付随する12個のターゲットのうち、「8-2. 高付加価値セクターや労働集約型セクターに重点を置くことなどにより、多様化、技術向上及びイノベーションを通じた高いレベルの経済生産性を達成する。」について見ていきましょう。
労働集約型セクターと資本集約型セクター、高付加価値セクター
多くの医師や看護師が必要とされる医療産業、美容や介護、小売りなどのサービス業、映像作品などを作成するコンテンツ産業、建設業など。こうした人手が多く必要で会社が支払う費用のうち人件費が高い割合を占める産業のことを労働集約型セクターといいます。コンサルティングファームや弁護士事務所、ソフトウェアの開発を行う会社など専門知識を使う会社も、人手が必要で人件費の割合が高いという観点から労働集約型セクターに分類されます。
実は、農業や鉱業等もかつては労働集約型産業でしたが、近年は機械化などが進み、必ずしも労働集約型セクターとはいえなくなっています。労働集約型セクターとは反対に、大規模な装置やインフラが必要で設備投資額が非常に高額な産業を資本集約型セクターといいます。たとえば、重化学工業や水道事業、鉄道事業などが該当します。
一般に、労働集約型セクターのなかでもサービス業は生産性が低いといわれています。その背景には、在庫化することが困難な事業内容であることやIT化や機械化が難しい事業内容であること、日本の消費者が高品質のサービスを無料だと認識しており価格に反映されていないことなどが原因として挙げられます。裏返すと、サービス業において仮にイノベーションが起きた場合、生産性が飛躍的に改善する可能性が高いといえるでしょう。近年では、AIやロボットなどがイノベーションを起こすカギとなる技術であると考えられていることもあり、サービス業の飛躍的改善への期待は非常に高まっています。
また、高付加価値セクターとは、原材料などの価格よりもより高い価格で商品を販売できる産業のことです。製造業や不動産業などがこれに当てはまります。「付加価値額」は、「従業員数」×「従業員一人当たり付加価値額(労働生産性)」によって決まるため、従業員が少ないセクターや効率化でコスト削減が進んだセクターが高付加価値セクターといえます。
日本と世界の一人当たり付加価値額(労働生産性)
OECDによると、2019年時点で日本国内の就業1時間当たりの付加価値額(労働生産性)は46.78ドルで、OECD加盟国のうち22位、G7では最下位です。日本政府は現在、日本国内の一人当たり付加価値額(労働生産性)を上げるため、「働き方改革」を推し進めています。労働時間だけを削減するのではかえって労働生産性を損ねるおそれがありますので、業務の効率化により業務自体を削減すること、残業時間で人事評価を行わないことなど、働き方を抜本的に変革する必要があります。また、目先のコストとして認識されてしまいがちで、なかなか採り入れられづらいRPA(ロボティックプロセスオートメーション)などのIT投資やBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)の活用なども求められています。
