【SDGs169のターゲット】8-1.一人あたり経済成長率の持続

SDGsでは、17のゴールの各々に紐づけられる169のターゲットを定めています。今回は、「8. 働きがいも経済成長も」の12個のターゲットのうち、「8-1. 各国の状況に応じて、一人あたり経済成長率を持続させる。特に後発開発途上国は少なくとも年率7%の成長率を保つ」について見ていきましょう。

一人当たり経済成長率

SDGsでは、「一人あたりの実質GDP」が平均生活水準を示すのを前提としています。GDPとは、国内で一定期間内に生産されたモノやサービスの付加価値の合計金額のことで、国内総生産とも呼ばれます。実際に市場で取引される価格に基づいて推計されたものが「名目GDP」、名目GDPから物価の上下を取り除いたものが「実質GDP」となります。「一人あたりGDP」は、実質GDPを人口で割ったものです。

一人あたりGDPを計算することによって、その国の生産性や経済水準を凡そ知ることができます。たとえば、2019年時点で中国の実質GDPは世界第2位ですが、一人あたりGDPは日本の約1/4です。産業構造の違いなどにより一律に比較することはできませんが、一般的に、一人あたりGDPが小さい国はまだまだ経済成長の余地があると考えられています。

2020年は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックの影響により、多くの国でGDPのマイナス成長が予想されています。IMFによると、2020年10月時点での世界全体の実質GDPの成長率の予想は―4.4%です。コロナ禍においては、GDPの成長を目指す前に「いかに経済の落ち込みを小さくするか」が各国の喫緊の課題となっています。

後発開発途上国(LDCs)とは

外務省によると、後発開発途上国(LDCs)とは、「国連開発計画委員会(CDP)が認定した基準に基づき、国連経済社会理事会の審議を経て、国連総会の決議により認定された特に開発の遅れた国々」のことを指しています。現在の後発開発途上国は、エチオピアなどアフリカ33カ国、カンボジアなどアジア9カ国、キリバスなど大洋州4カ国、中南米のハイチ1カ国の合計47カ国です。

後発開発途上国(LDCs)の認定には一人あたりGNI、Human Assets Index、Economic Vulnerability Indexの3つが基準として用いられています。一人あたりGNIとは実質GDPに交易利得と海外投資からの利益を足し人口で割ったもので、国民の生活の豊かさを表す指標です。現在、1,025米ドル以下が基準とされています。Human Assets Indexとは、栄養不足人口の割合、5歳以下乳幼児死亡率、妊産婦死亡率、中等教育就学率、成人識字率を指標化したものです。Economic Vulnerability Indexとは人口や産業構造などを基に経済の脆弱性を示す指標です。

後発開発途上国の現状

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックは、後発開発途上国(LDCs)に対し、これまでのSDGs達成のための取り組みが無為に帰す可能性があるほど深刻な影響を与えることが懸念されています。2020年10末時点で、後発開発途上国(LDCs)における感染者数は約88万人ですが、平時よりマラリア、HIV/AIDS、結核、栄養不良などの有病率が高いこと、病院の利用可能性などの保健能力が低いことから、何百万人もの子供たちの麻疹、マラリア、ポリオ、その他多くの致命的な病気の治療が後回しにされる可能性が高くなっています。

さらに、世界経済縮小の影響から、衣料品などの輸出に依存する多くの後発開発途上国(LDCs)において深刻な景気悪化が見込まれるほか、世界銀行は低・中所得国(LMICs)への送金は2020年に19.7%減少すると予測しており、家計レベルにおいても非常に厳しい状況に置かれる可能性があります。こうした状況を踏まえ、G7は最貧国に対し2020 年末まで公的な二国間債務の支払を猶予する「G20・パリクラブ債務支払猶予イニシアティブ(DSSI)」を実施しています。

コロナ禍にあって、一人あたり経済成長率を持続することが足元で極めて難しい状況にあることは否めません。しかしながら、経済成長は貧困の削減を果たすためにも、非常に重要な社会課題です。逆風の時こそ、地に足を着け、いかに今後挽回して前進していくかを、世界全体で冷静に考える好機と捉える必要があります。