【SDGs169のターゲット】6-3.水質を改善する

SDGsでは、17のゴールの各々に紐づけられる169のターゲットを定めています。今回は、「6. 安全な水とトイレを世界中に」に付随する8つのターゲットのうち、「6-3. 2030年までに、汚染の減少、投棄廃絶と有害な化学物や物質の放出の最小化、未処理の排水の割合半減及び再生利用と安全な再利用の世界的規模での大幅な増加により、水質を改善する。」について見ていきましょう。
未処理の排水の状況
排水は、産業排水と生活排水に大別されます。産業排水とは、工場や農場から排出される水のことで、生活排水とはし尿や台所からの排水など私たちの暮らしで発生する汚水です。かつて、水質汚濁の主な原因は産業排水でした。日本では、産業排水により水俣病やイタイイタイ病などの公害が発生し、これがきっかけとなって規制整備が進みました。その結果として、現在の日本の水質汚濁の主な原因は、生活排水になっています。
世界の水質汚濁の主な原因もまた生活排水です。とくに、下水道が整っていない新興国の生活排水による水質汚濁が問題視されています。著しい人口増加に伴い、生活排水の量も増加しているためです。
たとえば、多くの新興国で都市化が進んでいますが、都市化の進展と同時に都市の周辺にスラムが形成されています。スラムは不法に人々が暮らしている地域がほとんどであるため、行政によるインフラ整備がなかなか進みません。その結果として、これらの地域の生活排水がそのまま川や海に流れ出ることになり、公衆衛生上・環境上に問題が生じています。
水の再利用
地球上にある全ての水のうち、飲料水などに適している淡水は約2.5%しかありません。氷や氷河といった使用が難しい水源を除くと約0.8%、さらに少なくなります。限りある淡水の再利用が非常に重要です。
生活排水などの汚水を自然に放出・再利用するためには、浄化処理が必要不可欠です。自然にも浄化作用はありますが、多くの場合、汚水には自然の浄化作用以上のリンや窒素が含まれているからです。浄化処理を施さなければ地下水の汚染や土壌汚染につながり、作物や畜産物の病気・死亡などの被害が発生します。私たちが飲料として使用してしまった場合は感染症や中毒症状に陥る危険性があります。
現在、汚水は「活性汚泥(かっせいおでい)法」という方法で浄化されています。固形物を取り除いた後に、微生物に汚水を分解してもらう方法です。活性汚泥法は自然よりも早く浄化が可能である一方、大規模な設備が必要で、また、余剰汚泥(活性汚泥法の工程で生じる汚泥のこと)が発生するといった課題があります。日本国内の産業廃棄物の多くが余剰汚泥です。余剰汚泥は水分を多く含んでおり、焼却処分が困難という特徴があります。こうした課題を解決し、水不足を回避するため、多くの企業が技術開発に努めています。