【SDGs169のターゲット】5-3. あらゆる有害な慣行の撤廃

SDGsでは、17のゴールの各々に紐づけられる169のターゲットを定めています。今回は、「5. ジェンダー平等を実現しよう」に付随する9つのターゲットのうち、「5-3. 未成年者の結婚、早期結婚、強制結婚及び女性器切除など、あらゆる有害な慣行を撤廃する。」について見ていきましょう。
児童婚および子どもによる出産の状況
児童婚とは18歳未満での結婚またはそれに準ずる状態のことです。児童婚はニジェールやチャド、バングラデシュなどのアフリカ、南アジアで多く起こっています。児童婚は減少傾向にあるものの、現在でも約1,200万人/年の少女が児童婚の境遇に遭っているといわれています。本人が婚姻を望んだわけではなく、親が資金を得るためであったり、通過儀礼であったりします。児童婚により出産に耐え切れない子どもが子どもを出産することも珍しくありません。
世界銀行の『Economic Impacts of Child Marriage: Global Synthesis Report』によると、子どもによる出産のうち84%が児童婚によるものです。子どもによる子どもの妊娠や出産は母体の損傷や合併症のリスクが高く、生存できたとしても母となった少女は教育を断念しなければならないため貧困に陥ることも多くあります。
日本国内では、2022年4月から女性の婚姻開始年齢が18歳に引き上げられ、児童婚の問題は解消する予定です。しかし、ジェンダーに関わる問題を広く捉えた場合、課題はまだまだ多く残されています。
被暴力および女性器切除の状況
体格的に弱い女性が、暴力や性暴力の被害者となることは、残念ながら非常に多く見受けられます。世界銀行によると、新興国をはじめ世界全体の約35%の女性が被害に遭ったことがあります。また、女性が被害者となる殺人のうち、約38%が親密なパートナーによるものです。一部の国では強姦相手と結婚しなければならない社会慣習があり、女性が自殺してしまうケースもあります。
女性器切除とは、医療以外の目的で性器の一部を切り取ったり縫い合わせたりすることです。非衛生的な環境で麻酔を用いず行われることもあり、命を落とす危険や苦痛、大量出血が伴うことも多くあります。健康上の利点は何らなく、感染症や後遺症による激痛、失禁による社会生活の困難、自尊心の低下、出産時の死亡率上昇などを引き起こします。女性器切除はアフリカ、中東、アジアで行われており、これまでに2億人以上の女性が対象となっています。
世界全体には様々な文化や生活様式があります。しかし、どのような文化や生活様式であっても、特定の対象の方々を虐げる誰の目から見ても有害な慣行には、国際社会において厳しい視線を与えなければなりません。これを撤廃していく方向に動いていくのは今後ますます必要不可欠な措置といえるでしょう。