【SDGs169のターゲット】4-2. すべての子どもに初等教育を受ける準備を

SDGsでは、17のゴールの各々に紐づけられる169のターゲットを定めています。今回は、「4. 質の高い教育をみんなに」の10個のターゲットのうち、「4-2. 2030年までに、全ての子供が男女の区別なく、質の高い乳幼児の発達・ケア及び就学前教育にアクセスすることにより、初等教育を受ける準備が整うようにする」について見ていきましょう。
就学前教育の効果
初等教育とは日本では小学校のことを指し、就学前教育とは幼稚園等での教育を指します。就学前教育の効果や重要性は、発達心理学や脳科学、経済学など多くの学問分野で研究されています。たとえば、就学前教育を受けた人と受けなかった人の人生を追跡し比較した海外の研究によると、就学前教育の効果・影響は成人頃まで続き、所得水準や教育達成度などに差異を生み出しているとの結果が出ています。こうした研究結果を裏付けるように、脳科学の研究によって、私たち人間の脳細胞は生後3年間の栄養や刺激、愛情などに大きく影響されることが明らかになっています。
新興国においては、先進国ほどの精緻な研究データがあるわけではありません。しかしながら、新興国では、家庭の経済的事情などから初等教育の中退率が高くなり貧困を脱するチャンスが失われていることが問題になっており、就学前教育はそうした問題の解決の糸口になる可能性があります。
3歳児神話は本当か?
こうした研究から、日本においてしばしば議論されている「3歳児神話」には正しい面と正しくない面があることが分かります。「3歳児神話」とは「3歳までは子どもにとって非常に大切な時期であるため、母親は働かずに養育に専念した方が良い」といった考え方のことです。まず、「3歳までは子どもにとって非常に大切な時期である」ということは正しい事実といえるでしょう。一方で、「母親は働かずに養育に専念したほうが良い」というのは必ずしも正しいとはいえません。もちろん、子どもに愛情を注ぎつつ教育することは非常に重要ですが、必ずしも母親に限定される必要はなく、父親や保育園など子どもの周囲の大人から与えられるかたちでも問題がないとされています。むしろ、母親の心理的ストレスなどを勘案すると、働くことで子どもと離れる時間をつくり、その間は周囲が支えるといったかたちほう方が子どもにとっても良好な環境となる場合も十分に考えられます。
教育問題を解決するために~世界的に貧困を脱し格差を縮小する社会を目指して~
教育によって貧困から脱する機会を得ることが可能になる一方、教育を受けることができるか、できないかによって、大きな経済的格差などが生じています。とくに、就学前教育は子ども本人の意向ではどうにもできません。世界的に格差を縮小していくためにも、教育問題は様々な側面から解決のためのアプローチを継続することが非常に重要です。