【SDGs169のターゲット】3-1.世界の妊産婦の死亡率の削減

SDGsでは、17のゴールの各々に紐づけられる169のターゲットを定めています。今回は、「3. すべての人に健康と福祉を」の13個のターゲットのうち、「3-1. 2030年までに、世界の妊産婦の死亡率を出生10万人当たり70人未満に削減する」について見ていきましょう。
妊産婦の死亡率の意味と日本国内の状況
「妊産婦」とは、妊娠中の女性と出産後約40日以内の女性を指します。出産は大量出血を伴うため、衛生環境の整っていない国では女性が亡くなってしまうケースが珍しくありません。妊産婦の死亡率は、保健や医療の政策を検討する際に重要な指標の1つとなることから、各国で統計調査が実施されています。
国立社会保障・人口問題研究所「妊産婦死亡数および率」によると、日本国内における妊産婦死亡数やその率は、1899年から記録されています。2020年現在から100年前の1920年は10万人当たり330人でしたが、1990年以降は1桁台を維持し、2018年時点では10万人当たり3.3人とごく少数となりました。現在の死因は自殺が最も多くなっています。
SDGs以前の世界の妊産婦死亡に関する状況
妊産婦死亡率の削減は、SDGsの前身であるミレニアム開発目標(MDGs)においても、「5.妊産婦の健康の改善」というかたちで目標とされていました。MDGsの最終報告では、1990年と比較し、妊産婦死亡率は45%低下したとされています。また、医療従事者の立ち合いの下に行われた出産が世界全体で59%から71%に上昇し、安全性の観点では改善されたといえます。
一方で、医療従事者の立ち合いのない出産の多くはサブサハラ・アフリカ地域(サハラ砂漠以南のアフリカ地域)と南アジア地域に集中しています。両地域は妊産婦死亡の8割超を占めており、課題の大きい地域となっています。
世界全体の妊産婦死亡の現状とこれから
世界保健機関(WHO)によると、2017年時点で世界全体の妊産婦の死亡は10万人あたり211人、毎日約810人の妊産婦が亡くなっています。その9割以上が低~中所得国で起こっており、地域別では先ほどお伝えしたとおりサブサハラ・アフリカ地域と南アジア地域とで発生しています。なかでも、とくに10歳~14歳の少女による出産のリスクが高いことから、児童婚の対策などが喫緊の課題です。
サブサハラ・アフリカ地域、南アジア地域などの貧しい地域では、病院で出産ができずに亡くなってしまう女性が多くいます。問題の根底には、女性の社会的地位が低いことや児童婚などの社会問題があります。
こうした女性たちを減らすために、医療人材の育成や病院などの医療施設の整備、また、より包括的なケアや社会制度の拡充、男性の育児参加、望まない妊娠の防止などを推し進める必要があります。