【SDGs169のターゲット】2-4. 強靭(レジリエント)な農業の実践

SDGsでは、17のゴールの各々に紐づけられる169のターゲットを定めています。今回は、「2. 飢餓をゼロに」の8つのターゲットのうち、「2-4. 2030年までに、生産性を向上させ、生産量を増やし、生態系を維持し、気候変動や極端な気象現象、干ばつ、洪水及びその他の災害に対する適応能力を向上させ、漸進的に土地と土壌の質を改善させるような、持続可能な食料生産システムを確保し、強靭(レジリエント)な農業を実践する。」について見ていきましょう。

気候変動問題と強靭(レジリエント)な農業

強靭(レジリエント)とは、回復力やしなやかさを意味します。SDGsでは、災害の被害最小化や被災からの迅速な回復力のことを指しており、随所にこの「強靱性(レジリエンス)」を盛り込んでいます。

気候変動の影響により気温の上昇や豪雨の増加などが起こると、これまで通りの農業ができなくなってしまうおそれがあります。たとえば、作物の適地が変わってしまい今まで育てることのできた作物が育てられなくなってしまう、土砂災害や洪水で農地が使えなくなってしまう、生態系の変化による害虫や疾病が流行してしまう、といったことが起こります。こうした事態が起こると、農作物の価格が高騰し、人々の生活に多大な悪影響が出ます。また、さらに深刻化すると、食料不足や飢餓が発生することになってしまいます。

逆に、気候変動により育てられる作物が変わったことをビジネスチャンスとしている地域もあります。重要なことは、気候変動問題に適応しながら食料不足や飢饉に陥らないよう生産量を維持・増加させることと、それによる土壌劣化や生態系の破壊といった悪影響を最小限に抑えることであり、ターゲット2-4はそれを目指す目標です。

強靭(レジリエント)な農業を実現するために

日本国内においては、「農林水産省気候変動適応計画」が定められています。これは、気候変動問題が進行しても食料の安定的な供給ができるよう農林水産省が作成したものです。これによると、日本は強靭性(レジリエンス)を向上するために、防災施設の整備や品質低下・生産量減少を抑える適応技術や適応種の研究開発を進めています。

一方、世界ではそもそも災害の有無に関わらず食料が不足しています。2014年から飢餓人口は増加し続けており、現在は約6億9千万人、地球上の全人口のうち約8.9%もの人が飢餓状態に置かれています。このまま何もしなければ、飢餓人口は2030年に約8億4千万人に増加する見込みです。

世界の食料不足は、日本国内で暮らす私たちにとって対岸の火事ではありません。日本の食料自給率は2018年時点において生産額ベースで約66%、カロリーベースで約37%です。日本以外の国で大規模な不作が発生した場合や、食料を巡る暴動や輸出規制が起きた場合、日本国内でも食物価格の高騰が起きるおそれが十分にあります。

誰もが安定的に食料を得ることができる世界を作るためには、食料生産性を向上する必要があります。とくに、途上国の農村における農業は先進国の農業に比べて生産性が低い状況です。生産性が低いことの背景には、流通インフラの未整備や農薬や備蓄設備の不足、土地の所有権に関する制限などがあります。こうした事態を解決するために、教育やジェンダー、金融などあらゆる方面からアプローチすることが肝要です。