【SDGs169のターゲット】2-3. 小規模食料生産者の農業生産性および所得の倍増

SDGsでは、17のゴールの各々に紐づけられる169のターゲットを定めています。今回は、「2. 飢餓をゼロに」の8つのターゲットのうち、「2-3. 2030年までに、土地、その他の生産資源や、投入財、知識、金融サービス、市場及び高付加価値化や非農業雇用の機会への確実かつ平等なアクセスの確保などを通じて、女性、先住民、家族農家、牧畜民及び漁業者をはじめとする小規模食料生産者の農業生産性及び所得を倍増させる。」について見ていきましょう。

途上国における小規模食糧生産者の暮らし

貧困層」に位置づけられる飢餓と隣り合わせの暮らしを送る方たちの約8割が、農村で農業に従事しています。こうした貧しい農業従事者の方々は、自ら食糧を生産しているにもかかわらず、食糧が満足に手に入らない暮らしに陥ることも珍しくありません。先進国の農業従事者と途上国の貧しい農業従事者を取り巻く環境を比較すると、その要因や課題が見えてきます。

①十分な土地・設備を保有しておらず、脆弱性が高い

土地にかかる税金が高い・土地を購入する資金力がないといった理由から、農業従事者の方々が自ら土地を持たず、土地を借りて農業を行っていることが多くあります。また、文化的な理由により女性に土地を保有する権利が与えられておらず、借りるしか選択肢がないケースもあります。

土地を借りて農業を行う場合、順調に収穫でき、安定した売り上げがあれば大きな問題は生じません。しかし、農業は収穫量が天候に左右されるため、安定した収穫や売り上げは容易ではありません。そうした不作の時であっても常に賃料を払い続けなければならないため、自ら食べる分の食糧さえも売ってしまい、食糧を生産しているのに食糧不足という状況に陥ることがあります。
先進国ではそうした事態に備えて豊作時に食料を備蓄しておくといった取組みが実施されますが、途上国においては備蓄する設備が整っておらず、カビや害虫・腐敗などにより食料が棄損してしまうため備蓄が普及していません。設備を整えるほどの収入がないほか、収入が低い農業従事者のための金融サービスが少ないといった金融サービスへのアクセスの欠如や金融リテラシーの欠如も背景にあります。

②生産性が高くない

土地や設備の問題に加えて、小規模であることや農薬や道具などを揃える資金力がないことなどから、途上国の農村における農業は先進国の農業に比べて生産性が低い状況です。生産性を改善するためにはある程度の投資が必要ですが、日々の生活で手一杯のためそれができないのです。また、これまでの経験から必要性が理解されないといった課題もあります。

小規模農業の多くが家族農業と呼ばれる、家庭内のメンバーの労働力だけで行う形態です。先進国における家族農業は、トラクターなどの設備や農薬などの技術により生産性が高いからこその家族農業ですが、途上国における家族農業は設備投資の代わりに子どもたちを労働力とするため、労働集約的で生産性が向上せず、収穫量が増えても食い扶持も増えることから貧困から抜け出すことが難しくなっています。

③流通に問題がある

途上国の農村地域では、上下水道どころか道の整備も追いついていません。仮に車で移動したとしても、道が劣悪なことが多く時間を要します。そのため、収穫量が増えたとしても、市まで運びそれを売るまでが容易ではありません。そうした状況から、生産性改善へのモチベーションが低く、設備投資にも積極的になれないといった事情があります。

教育上の課題

こうした農村地域の家庭に生まれた子どもたちは、学校教育を十分に受けられないことが珍しくありません。親にとっては子供が学校に通うよりも家庭の農作業を手伝う方が好ましい、子どもたち自身が学校教育の必要性を感じられない、学校教育にかかるコストが支払えない、学校に行くまでの間に何らかの犯罪に巻き込まれる危険性があるなどの理由からです。

こうした理由から教育を受けることができないことで、より高い収入の仕事に就く機会が失われてしまい、なかなか貧困を脱することができないという悪循環に陥っています。