【SDGs169のターゲット】17-1. 課税および徴税能力の向上のために

SDGsでは、17のゴールの各々に紐づけられる169のターゲットを定めています。今回は、「17. パートナーシップで目標を達成しよう」の19個のターゲットのうち、「17-1. 課税及び徴税能力の向上のため、開発途上国への国際的な支援なども通じて、国内資源の動員を強化する」について見ていきましょう。

国家における課税・徴税能力とは

税金は、道路や水道といったインフラ、警察や防衛、教育など社会的に必要な公的サービスの運営資金です。日本で暮らす私たちにとっては、税制度やインフラが整っていることが「普通」ですが、新興国においてはそうではありません。税制は、国家が戸籍を正確に管理していることや、経済活動をある程度補足できること、徴税担当者の職業的倫理観などが前提となっています。こうした前提を整えるには、相当の労力、資金、時間が必要となります。

一般に、新興国は徴税能力が先進国よりも低いと考えられています。制度が頻繁に変更される、地域や担当によりばらつきがある、賄賂や横領が横行している、手続きが遅延するといった状態が散見されるほか、行政が捕捉できない経済的な取引も多いためです。税金は社会インフラの整備に使用されることを通じて、社会全体の富の再分配の機能も果たしています。新興国ではそうした富の再分配機能が弱く、貧困からの脱却が困難であることも問題の1つです。

日本が新興国に実施している支援

新興国の税制をめぐる問題解決のため、国税庁は技術協力として中国、インドネシア、マレーシア、フィリピン、ベトナム、カンボジア、ラオスなどに専門家を派遣しています。そのほか、国際協力機構(JICA)と協力した国際税務行政セミナーの開催や、日本に留学している途上国の税務職員を主な対象とした実務研修を開催しています。

国際連帯税をめぐる議論

気候変動問題や貧困問題、テロの脅威、感染症の流行など地球規模の問題が多くなるなか、「国際連帯税」という仕組みが議論されてきました。国際連帯税とは、国境を超える経済活動に課税し、SDGs達成のための資金に充てるという構想です。具体的には、航空券税・武器取引税・国際金融取引税などが検討されてきました。日本の外務省は2010年度以降、継続して国際連帯税の導入を目指してきましたが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行による経済的落ち込みを受け、2020年度は要望提出を見送っています。

先ほど申し上げたように、新興国は先進国に比べ徴税能力が低いため、インフラ整備などに充てる資金源をすぐに自力で補うことは難しい状況です。どんなに先進国が自国のテロ対策、感染症対策、経済対策などを推し進めたとしても、ゆくゆくはインフラ整備が後回しにされた脆弱性の高い地域から綻びが生じ何らかの影響を受けます。新興国が世界経済の輪から外される事なく、世界全体が豊かになるような資金の流れを創り出すことが肝要といえます。