【SDGs169のターゲット】15-1. 陸域生態系等の保全、回復および持続可能な利用の確保

SDGsでは、17のゴールの各々に紐づけられる169のターゲットを定めています。今回は、「15. 陸の豊かさを守ろう」の10個のターゲットのうち、「15-1.  2020年までに、国際協定の下での義務に則って、森林、湿地、山地及び乾燥地をはじめとする陸域生態系と内陸淡水生態系及びそれらのサービスの保全、回復及び持続可能な利用を確保する」について見ていきましょう。

陸域生態系と内陸淡水生態系とは

森林や草原、砂漠などの自然環境、あるいは熱帯雨林やツンドラ地域(※)などの気候区分は、どういった植物が育っているかという「植生」により分類されます。陸域生態系とは、こうした植生を食料・住処などとして活用する全ての生物を指します。陸地に存在する樹木、草花、昆虫類、動物、爬虫類、微生物などのあらゆる生き物は食物連鎖や共生関係によって相互に影響を与えていることから、1つの生態系として捉えられています。

※ ツンドラ地域とは、地下に永久凍土が広がる降水量が少ない地域のこと。

内陸淡水生態系とは、陸域生態系のうち特に湿地や河川の流域、湖沼などの水辺の環境に限定した生態系のことです。内陸淡水生態系は、河川の直線化や護岸工事、ダム建設や農地転用のための干拓により大きな影響を特に受けており、急速にその多様性が失われています。国際的な自然保護団体である世界自然保護基金(WWF)が2年ごとに刊行している”Living Planet Report”によると、1970年以降、湿地の85%が失われています。また、同団体は”Living Planet Index”という指標も公開しており、これによると1970年から2016年の間に哺乳類や鳥類、両生類、魚類の個体数が68%減少しています。なかでも淡水魚の個体数の減少は84%と著しい状況です。国立研究開発法人国立環境研究所も淡水生態系の損失に着目しており、生物多様性が失われることによる影響は、初めは小さいものの後に加速的に表れると警鐘を鳴らしています。

気候変動問題との関連性

陸域生態系は生物多様性の観点だけでなく、気候変動問題の観点からも重要です。大気中のCO2濃度は1950年代後半から南極やハワイで観測が開始されましたが、その増加幅が人為起源排出量から予想される幅よりも小さいことが明らかになっています。研究により、その原因は陸域での吸収、つまり森林などによるCO2の吸収だと判明しました。陸域生態系の保全・回復・持続可能な利用の目的は、生物多様性の維持・保全のほかに森林保護による地球温暖化防止があると考えられます。

自然保護に関する国際条約

生物多様性の維持・保全や自然環境保護を目的とした国際条約はいくつか存在します。世界遺産条約や、湿地などの保護を目的とするラムサール条約、絶滅危惧種の商取引を禁止するワシントン条約などです。こうした条約により最低限の国際協力体制は築かれているものの、根本的な問題の解決には至っていません。気候変動問題や生物多様性損失の問題を解決するためには、私たちの日々の消費パターンや企業のサプライチェーンなどを変革することが必要不可欠です。