【SDGs169のターゲット】12-1.10YFPの実施

SDGsでは、17のゴールの各々に紐づけられる169のターゲットを定めています。今回は、「12. つくる責任つかう責任」の11個のターゲットのうち、「12-1. 開発途上国の開発状況や能力を勘案しつつ、持続可能な消費と生産に関する10年計画枠組み(10YFP)を実施し、先進国主導の下、全ての国々が対策を講じる」について見ていきましょう。

10YFP採択までの地球環境問題についての歴史的経緯

地球温暖化問題や食糧危機問題、エネルギー問題などの「地球環境問題」は、1972年にローマクラブというシンクタンクが提出した「The Limits to Growth(成長の限界)」というレポートが契機となって世界中で議論されるようになりました。このレポートは、コンピューターシミュレーションを使用して人口や産業、食料などの増減の推移を予想したもので、当時のペースで人口増加や環境汚染が続くことについて警鐘を鳴らしました。それまでは、各国が地域ごとの公害対策や環境対策を中心に取り組んでいましたが、それだけでは不十分であり、地球全体で環境保全を実施する取り組みの必要性があることが明らかにされました。

その後1980年代に熱帯林の破壊、オゾン層の破壊、地球温暖化問題などが深刻化したことで、国際会議の開催や研究が進められ、1992年にはブラジルのリオデジャネイロにて「国連環境開発会議」(UNCED、「地球サミット」)が開催されました。この会議では、国際的な行動計画である「アジェンダ21」が採択され、法的な拘束力はないものの国際的な協力の姿勢が明文化されました。その後もしばしば国際会議で解決に向けた協調について議論されるなか、2012年には再度ブラジルのリオデジャネイロにて「国連持続可能な開発会議(リオ+20)」が開催されました。この会議では環境に優しい経済成長を意味する「グリーン経済」の重要性が認知されました。この時に採択された持続可能な社会を実現するための10年計画が「持続可能な消費と生産に関する10年計画枠組み(10YFP)」です。

持続可能な消費と生産に関する10年計画枠組み(10YFP)とは?

持続可能な消費と生産に関する10年計画枠組み(10YFP)は、「公共調達」「消費者情報」、「観光」、「ライフスタイルと教育」、「建築・建設」、「食糧システム」という6分野について「持続可能性(サステナビリティ)」を達成するためのプログラムです。

公共調達についてのプログラムは、政府・民間問わず、持続可能な公共調達を促進するための自主的に協力し合うパートナーシップです。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックの影響により直面している経済・社会的危機に対し、一部の国や団体が環境ルールの一時的な緩和などを求める動きを見せていることについて警鐘を鳴らしています。

消費者情報についてのプログラムでは、企業が製品やサービスのうち少なくとも50%について持続可能性(サステナビリティ)に関する情報を提供するようになることを目指し、政策の症例や研究などを実施しています。

観光についてのプログラムでは、2030年までに観光業における持続可能な開発の効果を高めることを目指しています。気候変動問題と生物多様性の課題を解決するため、廃棄物の削減と天然資源の有効活用を推進しています。このプログラムは「エコツーリズム」を促進しているといえます。

ライフスタイルと教育についてのプログラムは、政策立案者、企業、市民が持続可能な生活システムを構築するためのツールなどの開発、共有です。このプラグラムは、日本とスウェーデンの環境省が主導しています。

建築・建設についてのプログラムでは、持続可能な建築・建設を主流とするために好事例の共有や協力ネットワークの構築を実施しています。

食糧システムについてのプログラムでは、食糧消費と生産パターンをテーマに規範作成や政策支援、研究開発、現地活動などを行っています。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックの影響により、貧困層や高齢者など脆弱性の高い人々が食糧危機に陥る可能性を表明しており、食糧アクセス保証の必要性や予防のための健康的食生活の推進などを呼び掛けています。

こうした各分野での取組みを強化、推進していくことで、地球規模での持続可能な社会の実現に向けた動きとなるのです。千里の道も一歩からで、地道に積み上げていくことこそ必要不可欠といえます。