【SDGs169のターゲット】11-2. 持続可能な輸送システムへのアクセスの提供

SDGsでは、17のゴールの各々に紐づけられる169のターゲットを定めています。今回は、「11. 住み続けられるまちづくりを」に付随する10個のターゲットのうち、「11-2. 2030年までに、脆弱な立場にある人々、女性、子ども、障害者及び高齢者のニーズに特に配慮し、公共交通機関の拡大などを通じた交通の安全性改善により、すべての人々に、安全かつ安価で容易に利用できる、持続可能な輸送システムへのアクセスを提供する。」について見ていきましょう。

世界の輸送システムの問題

輸送には人を運ぶ旅客輸送と、荷物を運ぶ貨物輸送の二種類があります。ターゲット11-2は、旅客輸送に関する目標であると同時に人の移動手段を確保する目標と考えられます。

日本国内の輸送システムは、優れた輸送網を下支えする全国に張り巡らされた平坦な道路を含め、第二次世界大戦後の復興と高度経済成長期に築き上げられました。一方で、経済成長の途上または経済成長をまだ迎えていない新興国の多くには、輸送システムの課題が多く残っています。

日本国内で暮らす私たちには、どこかへ移動する際に多様な選択肢がありますが、世界にはその選択肢が極端に限られてしまっている方々がまだまだたくさんいます。たとえば、経済的に恵まれており、効率的な移動手段(自動車・バイク)を購入できる方たちは、就学・就業等でチャンスを掴み生活の質を高めることができます。一方で、経済的な制約があり、移動手段が限定される方たちは、乗合いバスや徒歩で長い時間をかけて移動しなければならず、就学や就業を諦めなければならないのが現状です。

公共交通機関を補完するミニバス・バイクタクシーといったインフォーマルなサービスも存在します。しかしながら、その担い手であるドライバーの大半は、自動車やバイクを自分で購入することは難しく、親戚から借金をして車両を購入する、ブローカーから日額の料金や売上の一定割合を支払う代わりに借りるなどしています。多くのドライバーは十分な収入がなく保険への加入が難しいため、一度事故を起こすと収入の手段がなくなるという不安定な状況で働かなければなりません。また、利用者側からしてみても、運転技術や素性が分からないドライバーの運転する車やタクシーに乗る危険を冒す必要がある、サービスによっては個別に値段交渉を行う煩雑さがあるなどの問題があります。

さらに、新興国のなかには、道路が整備されておらず、穴があちこちに空いているなどという国も珍しくありません。日本国内なら車で1時間走れば着くところに、3時間かかることもあります。その結果、人の移動も物の移動も制限されてしまい、円滑な経済活動が行えません。また、下水道が整備されておらず、少し激しい雨が降るとすぐ道が冠水してしまいます。冠水した道路では渋滞が起き、移動が著しく制限されます。

こうした輸送そのものに関する問題に加えて、「持続可能(サステナブル)」な輸送システムのためには、技術革新により輸送で発生する温室効果ガスの量を削減する、温室効果ガスの発生しない移動手段を普及させる、移動が容易な街づくりなどの工夫が必要です。

日本国内の輸送システム

安全で時刻表どおりに運航する鉄道、認可制度により価格と品質の安定したタクシー、子どもの通学に使うこともできるほど安全なバス、トラブルが極めて少ない飛行機など、日本国内の旅客輸送システムはまさに「安全かつ安価で容易に利用できる」模範的なものといわれます。一方で、時代の変化と共に明らかになった新たな課題や更なる改善点もあります。たとえば、高齢者の自動車事故防止、二酸化炭素排出量の削減、環状道路の建設、利用者の少ない地方における公共インフラとしての維持、電車内での犯罪の抑止、ホームからの転落を防止する自動扉の設置、バリアフリー化などです。

とくに、日本国内の旅客輸送及び貨物輸送の両方の大半が自動車を輸送手段としていることから、「自動車が原因となる交通事故をどのように減らすか」、「自動車から排出される二酸化炭素の量をどのように減らすか」は重要な課題です。自動車が輸送の中心となる地方においては、高齢者や子供の移動手段が限られてしまい生活が難しくなってしまうことにもなりかねません。こうした課題解決に向けて、自動車メーカーは自動運転技術や電気自動車・水素自動車などの次世代型の自動車開発に力を入れています。