【SDGs169のターゲット】11-1.住宅等へのアクセスの確保、スラムの改善

SDGsでは、17のゴールの各々に紐づけられる169のターゲットを定めています。今回は、「11. 住み続けられるまちづくりを」の10個のターゲットのうち、「11-1. 2030年までに、全ての人々の、適切、安全かつ安価な住宅及び基本的サービスへのアクセスを確保し、スラムを改善する」について見ていきましょう。

スラム、無計画な居住地および不適切な住宅に居住する都市人口の割合

世界銀行によると、スラム街で生活する人は減少傾向にあるものの、2018年時点では世界全体の都市人口に対して約3割に上ります。その人数はおよそ9億人です。とくに貧しい地域であるサブサハラアフリカ地域(サハラ砂漠以南のアフリカ地域)においては、半数以上の人がスラム街などの無計画な居住地や不適切な住宅で生活しています。また南アジア地域では、とくにインドやアフガニスタンなどにおいて、近年スラム街居住者が増加傾向にあるようです。

スラム街の問題点

スラム街とは、大都市の内部や周辺に、低所得者層が密集して暮らしている地域のことです。スラム街で暮らす人の多くは、紛争を逃れてきた難民や仕事を求めて地方から移住してきた人々です。こうした人の多くは教育を受ける機会に恵まれておらず、就業を断られてしまう、あるいは仕事を見つけられたとしても劣悪な条件であったり単発であったりします。結果として、都市の高い住居費を支払うことができない人が、既存の住民が使用していない未開発の地域や、ゴミ捨て場、河川用地など、生きるための食事や飲料水、単発の仕事などを比較的得やすい地域に集まることで、スラム街が形成されます。

スラム街で暮らす人々は高い失業率、貧困率からやむを得ず犯罪や麻薬取引などの違法行為に手を染めてしまうこともあり、スラム街の治安は良くありません。また、住宅が脆く火事や地震といった災害の際は多くの人が犠牲になります。上下水道などのインフラが整備されておらず衛生環境が悪いため感染症などのリスクも高い状況です。一度感染症が流行すると、密集して生活していることからすぐに伝染してしまいます。CNNによると、2020年7月末時点でインド・ムンバイのスラム街では57%の人が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染しているとのことです。

日本における「ドヤ街」、ホームレス

日本にもいくつか日雇い労働者向けの安い簡易宿泊所の立ち並ぶ、いわゆる「ドヤ街」やホームレスの多い地域があります。日本で住居を持たないホームレスの人は、厚生労働省の「ホームレスの実態に関する全国調査(概数調査)結果について」によると、2019年時点で4,555人(男性4,253人、女性171人、不明131人)です。実際は、統計上把握できていない人もいる可能性を考えると、さらに多数に上る可能性もあります。

今後は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックで失業する等の影響を受けることにより、寮費やネットカフェ利用料などを支払うことができず、ホームレスになることを余儀なくされる方が増加するおそれがあります。

SDGsで目指す「スラムの改善」は、日本にとって決して無縁の目標ではありません。誰もが安全な住宅で衛生的な生活ができるよう工夫することは、現在住居のない当事者にとってだけでなく、衛生環境の維持や経済発展などの社会全体の利益につながっています。就業支援や教育支援など様々な取り組みによって、社会全体で問題解決に挑むことが必要不可欠です。