【SDGs169のターゲット】1-1.極度の貧困をあらゆる場所で終わらせる

SDGsでは、17のゴールの各々に紐づけられる169のターゲットを定めています。今回は、「1. 貧困をなくそう」の7つのターゲットのうち、「1-1. 2030年までに、現在1日1.25ドル未満で生活する人々と定義されている極度の貧困をあらゆる場所で終わらせる」について見ていきましょう。
貧困とは何か:「絶対的貧困」とは?
貧困は、「絶対的貧困」と「相対的貧困」の2つに大きく分類されます。
絶対的貧困とは、人間としての生存条件が十分に満たされていない状況を指します。地域性や文化とは関係のない栄養失調に陥るなどの生命の危機状態を指すことから、全世界共通の貧困の様相を表す概念です。明確な定義は世界銀行などの国際機関や国家により様々ありますが、SDGsでは絶対的貧困のなかでも「現在1日1.25ドル未満で生活する人々」を「極度の貧困」として定めています。
この「極度の貧困」状態に陥っている人々は現在、地域別に見るとサブサハラ・アフリカ地域(サハラ砂漠以南のアフリカ地域)が最多となっています。また、今般の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)蔓延の影響により、南アジアなどのアジア圏でも「極度の貧困」に陥る人が増加するとの研究が報告されています。それもあり、今後、全世界で10億人以上の人が「極度の貧困」に該当する可能性があります。
貧困とは何か:「相対的貧困」とは?
相対的貧困とは、その国の一般的な生活水準等と比べ経済的に困窮した状態を指します。つまり、国内における男女や収入、地域の違いによる経済格差のことです。絶対的貧困と比べて、顕在化しにくいという難点を抱えています。しかし、生活に支障があり、将来に対する不安が大きく、物心ともに安定しないという深刻性を無視することはできません。
厚生労働省「世帯構造別相対的貧困率の推移」によると、日本国内では、2015年時点で相対的貧困率は15.7%です。また、なかでも子どもの貧困率は13.9%を記録しており、約7人に1人という高い割合で子どもの貧困が発生しています。こうした相対的貧困に陥っている人々は、自然災害や経済動向の影響を受けやすく、今般の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)蔓延の影響により、一層厳しい状況に置かれてしまっています。
SDGs「1. 貧困をなくそう」のターゲット:「1-1. 2030年までに、現在1日1.25ドル未満で生活する人々と定義されている極度の貧困をあらゆる場所で終わらせる」
SDGsでは、絶対的貧困に置かれた人々のなかでも、とくに貧しい「現在1日1.25ドル未満で生活する人々」(極度の貧困層)の暮らしを、2030年までに大幅に改善することを目指しています。
国際社会は、SDGsの前身であるミレニアム開発目標(MDGs)の達成期限の2015年までに、1日1.25ドル未満(=2001年MDGs策定当時の貧困ライン)で生活する人々の割合を大きく低下させてきました。下の図を見ると、貧困人口の割合は、1990年には総人口の約36%であったのが、2015年には約10%まで減少しました。
しかしながら、サブサハラ・アフリカ地域をはじめ、地域によって絶対的貧困、「極度の貧困」に陥っている人々は、残念ながらまだまだ多数存在しています。また、今般の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)蔓延の影響により、世界経済全体が大きく減速することで、新たに絶対的貧困、「極度の貧困」に陥る人々もいるでしょう。こうした状況下にあっても、これまでの取組みが水泡に帰すことのないよう、引き続き国際協調しつつ一歩ずつ前進していくことが必要不可欠です。